蜂窩織炎ほうかしきえん
蜂窩織炎ほうかしきえん(別名蜂巣炎ほうそうえん)
〈病理〉
皮膚の表面ではなく、皮下脂肪に近い、深い層から皮下脂肪にかけて細菌が入り込んで、細胞の周りにある細胞間質を壊死させる皮膚の感染症。
蜂窩とはハチの巣のことで、顕微鏡で炎症を起こした脂肪組織を見ると、融解しきらずに残っている間質がハチの巣の仕切りのように見えることからついた。
〈症状〉
皮膚が赤く腫脹し、蚊に刺されたような赤みが点々と広がり患部を圧痛や熱感がある。全身症状で熱発、頭痛、錯乱、低血圧、倦怠感、関節の痛み、の出現する人もいるが、これらは重症の感染症であることを示している。
また、感染部位に近いリンパ節が腫れ押すと痛むようになり (リンパ節炎)、リンパ管が炎症を起こすこともある
9割が膝下に発症するが、その他の部位にも発症し部位ごとで名称が違う
手足の先端:ひょう疽(ひょうそ)
口内:口底蜂窩織炎
目の周り:眼窩蜂窩織炎
表皮全般:伝染性膿痂疹
蜂窩織炎は皮膚の深いところに発症する炎症疾患のため他人に伝染することはない。
〈原因〉
皮膚に細菌が付着しても通常は感染しないが、
ひっかき傷、刺し傷、手術での開放創、熱傷、真菌感染症(水虫)、皮膚の脆弱性(リンパ浮腫など)があると、そこから細菌が侵入することがある。
外傷がなくても発症することがある。
代表的な細菌はレンサ球菌、ブドウ球菌である
レンサ球菌は組織の働きを阻害する酵素を作り出すため皮膚の中で急速に広がっていく。
〈検査・診断〉
問診と視診
感染部の外観と、症状に基づいて診断される。培養・組織検査は必要ない。
DVTと症状が似ているため区別するための検査が必要なる場合がある。
〈治療〉
抗菌薬投与
症状が軽い場合は内服で可能だが、症状が広がるスピードが速い場合や熱発・倦怠感などの全身症状が出ている場合、持病により重病になるリスクが高い場合に入院加療で点滴治療となる。
また、内服で症状が良くならない場合も点滴治療が選択される
対症療法としては、腫れ予防のために下肢挙上。運動は刺激になるため禁止し、安静保持が必要。クーリングにて不快感軽減。
症状が改善する前に症状がいったん悪化することがあるが、これは細菌が死ぬ過程で組織損傷する物質を放出しているからである。物質の放出が起きると、細菌が死んでも体は反応するため、症状が早めに治まった場合でも抗菌治療は10日間以上継続し、完全に菌を死滅させる必要あり。完治していない場合は際限なく再発する。
〈予後〉
ほとんどは、抗菌薬投与で速やかに回復する。
重篤な場合は、皮膚の組織壊死性感染症(組織を急速に破壊する)や、最近の血液中への拡大(菌血症)などがある。
同じ部位に再発を繰り返すと、リンパ管が損傷し、その部位の組織がずっと腫れたままになってしまうことがある。
〈予防〉
免疫力が低下しているときは発症しやすいため、栄養状態を保つことや、小さな傷も防ぐこと、常に清潔状態を保つことが必要。
・外傷を避ける(手袋、長そでのシャツ、ズボンなどの着用)※虫刺されも注意
・土いじりも注意
・爪周囲の清潔に心掛ける
・水虫の治療
・保湿クリーム、薬用せっけんの使用
・無理や過労は避ける